
野口整体とは
野口整体は野口晴哉(はるちか)が提唱した整体法で、身体の裡(うち)に寄り添うことで自らの力を発揮させ整った体を追求する健康哲学、実践法です。
活元運動、愉気法、体癖論といった独自の理論を構築し、その教えや実践法は現在も多くの治療家、医療関係者が学び、広められています。
身体に起こる症状はすべて体にとって必要な反応であり、それを押さえようとするのではなく、そのプロセスを全うさせることが健康を維持するために大切である、というのが基本的な考え方です。
例えば、「風邪」に関しても、身体の歪みを整え、老廃物を排泄するための起こる健康的な反応である、といった考えは彼の思想を象徴しています。
彼の著書「風邪の効用」は、自然な健康を追求したい全ての人にぜひ読んでいただきたい本のひとつです。
私自身もこの本の内容を実践して、「風邪をうまく経過させることで元気になる」という経験ができています。

昭和三十一年、体育団体『社団法人整体協会』を文部科学省(旧文部省)の認可を受けて設立しました。
同協会は、彼の没後も支持者によって継続され、現在も全国各地で 活元運動、愉気法、体癖論等の理論と実践法の普及活動が行われています。
野口晴哉ってどんな人?
野口晴哉は、12歳の時に関東大震災に遭い、被災者へ「手かざし」を試みたところ、多くの人の病状が回復した経験から治療者としての道を志すようになります。
そこから古今東西の治療法を探求し、15歳で自らの道場を開き、その後、「社団法人整体協会」を設立。
野口整体として普及を図るとともに、潜在意識や子育て論などについても言及していきました。
彼の道場はいつも行列ができるほどの評判で、海外からも含め、医者や専門家が彼のもとに学びに来ていたようです。
そういった彼の能力と功績は、努力と探求の賜物であることは確かだと思いますが、同時に生まれ持った優れた才能と感覚の持ち主だったのではないかと思われます。
私にとっては「彼のようにはなれないな」というのが正直な感覚ですが、整体師としての在り方の原点を思い出すために、何度でも彼の思想や言葉に触れていたいと思えるバイブルであり、私のメンターです。
妻の野口昭子さんが書かれた「回想の野口晴哉 朴歯の下駄」という本では、野口晴哉氏の行動や思想、天才性を客観的に見ることができて面白いです。

当院においての野口整体
当院の整体のベースとなる考え方も野口整体と共通しており、施術や指導の中にもその理論や実践法を取り入れています。
ただ当院では、患者様の症状や状況に応じて様々な方法や理論を組み合わせているため、「野口整体」を謳ってはいませんし、活元運動や 愉気法等の指導も行っていません。
ただ、それらの理論や実践は、すべて「体が元々持つ力を発動させるためのもの」であり、当院で行う全ての施術や指導も、結果としては同じような効果を誘発させることを目的としています。
私自身は、「整体協会」や野口整体に関わる団体には所属していませんが、活元運動を実践する「活元会」 に時々参加して学ばせていただいています。
野口整体は、当院の施術に多く取り入れている「操体法」とも共通する部分が多く、言い方は違ってもやっていることは同じ、という部分も多いです。
身体や自然の基本法則というのは普遍的なものなので、そこさえ見失わなければ、理論ややり方にこだわる必要は無い、というのが当院の方針です。
もちろん、野口整体についての質問等がある場合は聞いていただければ、わかる範囲でお答えさせていただきます。

理論、方法論よりも「在り方」
彼の提唱する「体癖論」は、人の身体のクセを12種類に分類して、それぞれの体癖に合った施術や運動を行うというものですが、「そんな風に体系立てたりしなくても本来は、ここだと感じるところに手を当てれば、勝手に治るものだ」といったことを、彼自身が著書の中で言っています。
私が野口整体から最も影響を受けたのは、そういった「在り方」であり、一施術家として常にそれを心に刻んでいいます。
野口整体に興味がある方は、ぜひ本を読んでみてください。
本の中では、食事や生活習慣等に関しても触れていますが、それらは時代の変化と共に現在では通用しなくなっている部分はあります。
でも、人の身体や心の健康に関する考え方、あり方に関しては、普遍的なものだと私は感じています。
西洋医学や現在の一般的な健康観からすると、すぐには受け入れ難いものもあるとは思いますが、だからこそ少しでも興味のある人には何度でも読んでいただきたいです。

